「シシトウ事件」 今でも娘を縛るもの

「食べるロシアン・ルーレット」
って、ご存知ですか?

時にとても辛いものにあたる
『シシトウ』をそう呼ぶのだそうです。

 

ビタミンCやβカロテンを豊富に含む野菜ですから、
小さい頃から娘にも食べさせたかったのですが、
どれが辛いかわからずに、なかなか踏み切れないでいました。

 

そんな折、テレビの番組で
「辛いシシトウの見分け方」
を見たんです。

―――シシトウは、種の数が少ないほど辛い―――

早速シシトウを買って来て、
種の多いものだけ料理して食べてみると、
本当にどれも辛くないんですね。

 

これはすごい!と思い、娘に
「これは絶対辛くないシシトウだから、食べたてみて!」
と一つを差し出しました。

娘は素直にシシトウを口に入れ、数回噛んだら…
何とも言えない顔をして、
小さくプルプルと震え出したんです。

 

初めてレモンを口にした
赤ちゃんの動画がかわいいと評判でしたが
ちょうどあんな感じです。

その娘のビックリしている姿がかわいくて
思わず夫と二人で笑っちゃったんですね。

 

私達大人が食べたシシトウはどれも美味しかったですし、
万一辛かったらパッと吐き出すと思い込んでいました。

ところが、娘は口に入れたのは飛び切り辛いシシトウ!
それでも吐き出すのはお行儀が悪いと我慢していたんです。

 

口の中は得体のしれない辛さが広がり、
パニック寸前です。

助けてを求めて見上げた両親は、
困り果てた自分を見て笑っている!
助けてはもらえない!

いちばん助けて欲しい時に、
その姿を見て笑われた

 

その時に娘が導き出した教訓

「困った時には、
人にそれを悟られてはならない!」
でした。

 

その後の彼女の人生を大きく縛る
「思い込み」が作られた瞬間でした。

 

子どもなら「にがい~!」と言って
すぐに口から出すものと思い込んでいた私は、
娘が必死に辛さに耐えているなど夢にも思わず、
ほほえましい姿だと感じて

「いやぁ~、辛かったん?」
「そんな震えて~。」
「辛いんやったら、出したらええよ!」
と悠長に笑顔で話しかける始末…。

 

今、そのシーンを目の前で再現されたら、
「ちゃんと娘の表情を見て!」
「必死で訴えているでしょう!」
と自分を叱り飛ばしたくなるでしょう。

 

「子どもは、こうするはず」
という自分の感覚を基準とした固定概念(思い込み)があると、
実際の子どもを見る時にフィルターがかかってしまい、
本当の姿が伝わってこないんですね。

 

娘はこれ以降、
感情を表に出さないように
努力を重ねてゆきます。

 

それはやがて、
「自分で自分の感情に気付けない」
「困った時に、人にヘルプを出せない」
ということに結びついてゆくのです。

 

そして20年近くたった今でも、
自分が辛くて、SOSを出そうとした時に、
心の葛藤となって現れます。

 

必死の助けを無視される
自分は助けてもらう価値もない人間なんだ
と確認するような辛い思いはもうしたくないから、
自分で何とかしよう」と…。

 

実はシシトウは、
青唐辛子の辛み成分を抜いて、
食べやすく品種改良された野菜です。

なので、極端なすストレス(暑すぎる、水不足)
を受けると辛みを持ったものが現れ、
これは一種の防衛本能だとも言われているそうです。

 

娘が、学校へ行かない、
自分の殻に閉じこもる等の状態が続いたのも、
多くのストレスによる
防衛本能だったのかもしれません。

そうなら、本人が、
もう防衛しなくてもいい
困った状況をさらしても、
誰も笑わないし、助けてくれる
理解して解きほぐしてゆく必要があります。

 

大きくなれば
話を聴いて頭で理解できますが
傷ついた心はなかなか手強いもの。

本人でさえ忘れていた頃に、
ひょっこり顔を出して
辛さが再現されたりするようです。

 

こればかりは、特効薬が無いようで、
本人の心が腑に落ちる瞬間まで、
見守るしかないのかなと考えています。

その人にとって、
必要な一番良いタイミング
それは訪れるはずですから…。

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